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2010年02月10日

●自画像

受験の出題課題に「自画像」が頻繁に出題される。うがった見方をすれば女性の受験者を見分ける、モチーフ要らずで予算軽減。どちらにしろ大学にとってはとても有効なのだろう。しかし、私にはこうして自画像を本気でしっかり描いた記憶がまるで無いのだが、思い出すのは好きだったゴッホのあの痛々しい切り取った耳を包帯で覆った顔、そしてやはり青年期に憧れであった青木繁の描いた自画像、また「海の幸」に描かれた集団の中からこちらを見る顔だろうか。なんとも懐かしい・・。いや、話しはそんなことではないのだが、いざ、受験の為の自画像となると、はたして大学はいったい何を求めての出題なのかと本気で仕事上考えざるおえない。自画像が自分を客観的に見つめる為の自己探求、これが近年の最も主たる目標であろう。様々なポーズや多種多様な表現により自己の内面や存在表現を試みる。
とりわけ彫刻では、基本的形態の把握表現から塑造による表現では難しい「目」に意志を込めた表現までも加わって、取りあえず受験レベルでの表現の方程式なるものが出来上がっている。だからこそ、こうした表現の苦手な学生にはまったく合理的な「対策」を講じる。が、ここが美術の難しいところ。イメージを作りあげるセンスや美的な意識というものは、今、明日という訳にはいかないのだ。合理的で形式的な方法論だけを持って「教え込む」ことがなかなか難しい。
自分が自分を覗き込む。自分が他者となって自分を見つめる。自らをディレクションする才。大それたことでもあり、ナルシスト的であり、客観的で且つ冷静でもある。
女性の朝の身支度でもおよそ長くて10分(?)、男なら1週間鏡要らずということも。受験生は今日も6時間という長き時間を自分の顔と対峙する。取りあえずはマイワールドに徹底的に浸ってみることだろうか。

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自画像の為の個人データーより/M.Yさんの目より

2010年02月05日

●これから本番、卒業生

早起きして上野へ。お〜!懐かしき東京芸術大学。受験稼業と大学とは関係が強いとは言え、こうして母校の芸大に来るのもこの時期の卒業制作展くらい。懐かしさはあっても当然のごとくあまり用事はない。

それにしても「上野はやっぱりいいなぁ〜・・・!」と、9年間も通った道の記憶を辿りながら清々し冬の空気を吸い込む。 
ゆったり時間があるのでまずは大学のアトリエと大学美術館で展示の修了展示へ。
職業柄、懐かしい学生達に遭遇し話し込む。こんな時ばかりは「けっこう友達多いじゃない?!!」なんてまんざらでもなく単純に嬉しい。

今は大分慣れたのだが「あの学生がこんなになっちゃったの!」と本当に驚く。
考えて見れば自分も通って来た道だし当たり前なのだが、不思議に思えてしまうのだ。そして大概はそれぞれ作品制作のための技術や手法も私以上に身につけていて、あらためて驚くやらビビるやら嬉しいやら。

それでもそれはそれ、ひとつひとつの作品の自己評価を加えながら鑑賞していく。目はまるで芸能スカウトのように、そして若きエネルギーを吸い込もうとする吸血鬼のように。

老い行く作家はそれなりに必死なのだ。

卒業生諸君!闘いはこれからなのだよ!同じ境遇での作家活動。100年越しの恋のように最後まで諦めずに頑張っていきましょうね。

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大学院修了で美術館にて展示の松下さん、そして講習会でも講師として手伝っていただいている池島君。超美技のその作品。見事です。

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これもどばた出身の松岡君の作品の前で勝手に記念撮影。ほとんど、いやかなり変態に近いこの構成とイメージに心は『万歳!』というか脱帽で。こんな発想と価値観、僕にはありません・・。

●雪が暖かい

全国的に雪。東京は今年一番のハンパじゃない雪となった。
それにしても、案の定まったくあっけなく首都圏の交通網は分断、麻痺。天気予報で誰もが大雪となると知っていてのこの状況なのがよくわからないが、きっと事故がないように、ピリピリの緊張感の中で働いている沢山の人がいるのだと想像する。

 一方で授業を終えた学生等は嬉々として、はち切れ、はしゃいでいた。
みぞれ程度のべとべと雪でも彼等には童心になれる最高の瞬間のようで、見ていて思わずこちらもスキップ。こうしたハプニングは世の中のお父さん方には悪いがなかなかいい。

 翌日の公園。残った雪が輝いてこれもなんと気持ちいい。卒業制作展の美大への道、晴れやかに澄んで雪も祝いの白となって祝福しているかのよう。
 
結局、雪のため帰宅できなかった睡眠不足の私に、朝の光がぁあ〜まぶしい・・・・。

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芸大の卒展に向かう早朝の上野公園にて。