●彫刻に登る
近頃は公立美術館もテーマパークさながらの展示,企画内容で以前には無い親近感を作り出している。グッズは勿論、レストランの充実もその一環で、人気のある美術館などは「待ち」も。勿論、内部空間だけではなく、外部空間も市民の憩いの場所ともなって、子供連れの親子にとっては日がな遊ぶには絶好の場所にもなっている。文化的で自然空間も工夫され、安全でもあり安上がり。こうした空間はやはり彫刻や立体作品が主人公となる。
ある日の美術館での出来事。公園ともなった美術館の敷地にコロンビアの作家、
フェルナンド・ボテロ (Fernando Botero) のブロンズ作品。そうあの「デブ」、いや、豊満な女性像が見事に堂々と横たわっている。見れば、その上に子供が馬乗り、立ち上がり、枝を片手に調教さながら暴れ回っている。何ともワイルドだ。女性の裸像、そしてあのたっぷりですべすべのディテールは子供には何とも遊び心地がいいのだろう。と、それを見たおばさんが駆け寄り猛烈に声を荒げ注意する。
「芸術作品になんてことを!!」
怒りの矛先は近くにいた母親にも向けられたが、こちらはあまり相手にせず「はいはい〜、わかりましたぁ〜」って感じ。
よくある光景なのだが、当事者である彫刻家としてはどうだろう。ボテロはきっと微笑みでその子供等の行為を見守るのではないだろうか、と私は思う。皮膚で感じて、体験して、抱きついてその恵みを体全てで受け止めて欲しい。子供は理屈無しにそれを実践したのだろう。芸術はひどく寛容なのだ。