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2009年10月30日

●近視眼の驚き

モノに近づいてみることがある。視点が変わって違う世界が見える、そんなことを期待してのことなのだが、近頃は老眼も入って焦点もなかなか定まらず辛いのだが、それはともかくゆっくり外堀を埋めるように中心に向かうのだ。手で触れるように目で追いながら、しばし硬直して。対象物と等身大になる、そんな気持ちで。
 遠くを眺めていた私の前に突然出現した虫。一気に焦点を手前移し例のごとく自分の気配を消して眺め入る。不思議さ、というより「これは戦闘機だね」と緊張しながら顔を近づける。動かない虫の神経を思う。私より図太い・・・。と思った瞬間に飛び去った。私の中にどでかい存在を残しながら。
文献によるとミツバチなどの昆虫の羽ばたきは約250回/秒なのだそうだ。
 え?!、どうやって??!!
やはり、降参なのだ。
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2009年10月28日

●彫刻に登る

近頃は公立美術館もテーマパークさながらの展示,企画内容で以前には無い親近感を作り出している。グッズは勿論、レストランの充実もその一環で、人気のある美術館などは「待ち」も。勿論、内部空間だけではなく、外部空間も市民の憩いの場所ともなって、子供連れの親子にとっては日がな遊ぶには絶好の場所にもなっている。文化的で自然空間も工夫され、安全でもあり安上がり。こうした空間はやはり彫刻や立体作品が主人公となる。
 ある日の美術館での出来事。公園ともなった美術館の敷地にコロンビアの作家、
フェルナンド・ボテロ (Fernando Botero) のブロンズ作品。そうあの「デブ」、いや、豊満な女性像が見事に堂々と横たわっている。見れば、その上に子供が馬乗り、立ち上がり、枝を片手に調教さながら暴れ回っている。何ともワイルドだ。女性の裸像、そしてあのたっぷりですべすべのディテールは子供には何とも遊び心地がいいのだろう。と、それを見たおばさんが駆け寄り猛烈に声を荒げ注意する。
 「芸術作品になんてことを!!」
怒りの矛先は近くにいた母親にも向けられたが、こちらはあまり相手にせず「はいはい〜、わかりましたぁ〜」って感じ。
 よくある光景なのだが、当事者である彫刻家としてはどうだろう。ボテロはきっと微笑みでその子供等の行為を見守るのではないだろうか、と私は思う。皮膚で感じて、体験して、抱きついてその恵みを体全てで受け止めて欲しい。子供は理屈無しにそれを実践したのだろう。芸術はひどく寛容なのだ。

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2009年10月15日

●南アルプス/北岳

 どばた恒例の登山へ参加した。今年は北岳へのチャレンジ。勿論、ハイジャンプする程の最高齢参加で、かなりの足手まといなのだが、昨年の腰痛での不参加という、何とも不名誉な記憶を払拭すべく、仕事を圧縮してのハードスケジュールでの挑戦となった。
 テント、食料、寝袋など60リットルのリュックはかなりの重量。それに何を思ったかビール、酒、ウイスキー、おまけにチョコやらつまみやらを溢れんばかりに詰め込み、「いったいお前は山に何をしに行くんじゃ?」と、かなり自虐的「重量」に意気軒昂!。今を思えばテンションの上げ方がかなり間違って(狂って?)いたと悔恨、その影響はいとも簡単に初日の登りで現れ、見事に重量に耐えきれない脚は痙攣というとんでもないアクシデントを起こしてしまった。とりあえずチームから離れ、「マイペース登坂」で何とか切り抜けたものの、地獄のような時間となったのは言うまでも無い。
 二日目、北岳頂上を全員無事に済ませ、200m程下山しベースキャンプを張り、さらに中白根山、間ノ岳へとアタック。やはりチームのしんがりにひっつきながら、ひいいこらひいこら何とかかんとか登頂。 晴れた空、眼下の雲海。眩しい太陽。清々しい空気。達成感。心地良い疲労。全てを飲み込みながら岩の上に大の字になり大地の頂きと太陽にサンドイッチ。そしていつしか私は極楽のような睡眠の中に・・・・・。これが悪夢の始まりとも知らず・・・。

 下山後、疲労快復と言わば慰労会を兼ねて温泉へ。長々と熱いお湯に浸り顔も身体もポッポッポ。上がりの酒も入って全ての血管が元気に体流し、蘇る活力が熱さとなってさらに顔に集合。焼けた肌も男の勲章とばかりに誇らしく・・・・。

いや、実に舐めきっていた・・。

当然の如く知るべきだったのだ。これが強度の紫外線による火傷であることを・・・。

つづく

北岳頂上+月+眼前には雲海に浮かぶ富士+東よりご来光

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2009年10月09日

●生真面目台風

台風一過の秋晴れ。学生等の通学の足も一時足止めでひどく出鼻をくじかれた感じ。それにしてもつくづく意地悪な台風だったなぁ〜。近年は日本上陸の台風もかなり減少していることもあり、久々の大型台風の来襲に日本中が「気合い?」が入っていた。太平洋でいっぱいに水分を吸ったわんぱく者は蒙古来襲さながら上陸。「おらおら〜!!」とばかりに荒れて雨風ぶんぶん。通常はこのまま日本海に抜けて熱帯低気圧かなんかになって「さよなら〜」と消滅なのだが、この台風は違っていた。日本列島をまるでなぞるように北上。ほんとに几帳面な台風であった。被害も甚大で亡くなられた方も。再生と崩壊。簡単には言うが、冬を迎えての生活を想像しやはり憂う。しかし崩壊と再生。人はあくまで強いようである。
受験生諸君!崩壊した自己作品の再生に向けて頑張りましょう!! 

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2009年10月08日

●ボクサー

古い話しだが、私が受験生の時、予備校の恩師から塑造制作でのアドバイスを受けた。それは「彫刻家にとってフットワークがとても大事だから足周りを片付けなさい。」いうことだった。3次元を扱う彫刻は360°の世界であり、かといって目前のモチーフや自作を空中に浮かんで確認することはできないが、上下左右からの確認や観察、そして客観的比較の為に常にモチーフや自作から距離を置いてみることが重要となる。それはまるでボクサーのようなフットワークにも似てアクティブだ。常に集中し、動き、観察し、ジャブを繰り出し気力と体力をもって立ち向かう。ボクサーの栄光は相手を倒すことだが、彫刻家の栄光は?
繰り出したジャブとストレートは徐々に明快な形を伴って光輝き出す。
ボクシング経験の私であるが、実は公式試合3戦3敗・・。そして現在、我彫刻世界の全敗を歩み続けているようにも感じる。まだまだフットワークが本気で足りないようである。
少しスパーリングで鍛えるか?!

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2009年10月06日

●今井 大介 ー群盲が巨象を撫でるー

秋山画廊、「今井 大介」個展へ行って来た。台風前の何やら怪しい雨まじりの中。前回紹介したどばた彫刻出身の戸谷君等と共同アトリエだという。類は類を呼ぶというが、彼等のメンバーは作品を知る限り良いライバルに感じる。作品への思考やそれぞれの独自性も含めて興味深い。不思議なのは彼は多摩美出身なのだが、私の中にある多摩美生に感じる匂いというか特徴が彼の中にはない。本人には会えなかったがビール2缶で長居してしまった。今井君を含め教え子達が多くの実践を重ねて行く。追われる身に迫るパワーとでも言うか、チャレンジに満ちた秀逸な作品は矢張り逆噴射のように力湧く。
 ちょっと飲み過ぎもしたが・・・・。
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