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2009年08月22日

●全国夏の講習会!解散!

本日を持って長い長い暑い熱い夏の講習会の全ての日程が終了です!!
全国のトップレベルの美術系高校を中心に集った学生達も、疲れがピークに達し心なし安堵の表情も。最後の課題となった「セント・ジョセフ」をモチーフにしたコンクールも、高校生の大躍進で締めとなりました。
トップ3の結果を出した学生へのささやかな賞品は、「すいか×2個」。そして最後はそのすいかを「王様」のようにみんなに振る舞える!のだ!という若干イベントのノリの盛り上がりで「夏」を頬張りました。
しかし何よりも、本人にとっては遊びへの欲望を抑えて自らの目標に向かって邁進した日々と、その結果こそが褒美でしょう。それにしても彫刻を目指す人は他の科に比べ精神的にも肉体的にも健康的というのが長年の印象です。とてもプリミティブな感性と常に交信しているからかもしれませんね。冷えを欠いた甘いすいかにかぶりつく様もいいですね。皆さん、本当にお疲れさまでした。さらに自分に磨きをかけて、また冬に会いましょう。
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2009年08月19日

●夏の落下物

今日も暑い・・。遅かりし夏がギンギンにたぎる。そんな中で負けじ!と存在を主張するようなささやかな光景が沢山ある。すいどーばたの界隈は「気にすれば」こうした光景や体験が普通にできる場所でもある。
 道すがら見つけた花は大輪の見事なものだった。とその下には落下した花が、かわいらしくまるで和服の柄のようにくるんと丸まっている。あのぎんぎら太陽に向けて開いた花は地上で蕾みになった。一枚の折り紙が立体に変化したようで思わず手にとった。
 学校の玄関前。前を歩くデザイン科女性講師がふと足を止め地上を見つめる。何か見つけたようだ。ギンギンの太陽を避けるようにさした日傘。そして彼女の不可解な次の行動に私が足を止めた。靴先でこわごわと地上の何かを「ちょこっと」蹴ったのだ。彼女は一瞬、落胆と安心とが混じったようになりながらも納得したように歩き出した。私は足早にその場に向かった。それは「蝉」だった。そして全てを理解した。

 今朝の二つの小さな拾い物、それは今しがたまで自らの命のクライマックスを真夏の太陽と共に叫びきった後の躯だった。消え去るものの形もなぜか美しい。
 
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2009年08月15日

●構成する

いくつかのものを組み合わせて美的バランスをとる。塑造での構成課題は、そうした立体の自由な組み合わせの可能性を探る試みである。

例えば「手と立方体の構成」。
「手=有機的 」「立方体=無機的」と、まずはおよそ何の関係も脈絡も無い二つの要素を逆に利用し組み合わせることで、鮮やかな視点を浮かび上がらせる。つまりは全く異質なものの関係とは新たな世界感を生み出すための始まりなのである。こうした構成課題の主たる目的は量塊としての彫刻の特性というよりは空間表現への自由なアプローチである。

 さて、美術の歴史に於ける「構成主義」は、1920年代にかけてソ連で展開した芸術運動を指すのだが、タトリンがピカソやシュプレマティズムの影響を受けて始めた鉄板や木片によるレリーフを「構成」と呼んだのが発端だという。これは彫刻の歴史上では言ってみれば初の完全な「抽象彫刻」であり、量塊ではなく空間表現としての彫刻であることなどの点においてまさに革命的であった、と歴史は記す。

 基礎としての構成課題も空間への積極的なアプローチではあるが、あくまでも「手」という具象形態を中心にしている点では物語としても多様なイメージ表現もたやすい。
抽象という概念が古代の異物のようになってしまってはいるが、想像力の根源とは名付けることもできない抽象的なものかもしれない。物語を使わずに物語を作る。いつかは課題にしてみたい。

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2009年08月10日

●線の風景

夏の暑さも本格化しないまま台風も襲来し、燃えもせず、発散もせずのフラストレーションが溜まりそうな夏。若者でなくとも「少しははっきり夏は夏らしく振る舞ったらどーだあ!」くらいの苦言をお天道様に申し述べたくもなる。逆に学生へのデッサンの指導は理由を欠いたリベンジ精神さながらさらにエスカレートして濃くなっていき、中には涙ながらに逆襲を試みる学生もいてこちらはこちらでキナ臭い。
 最中、ふと息抜きに外へ。夕方の風景に線が浮かびあがる。何かやけにノスタルジックな記憶を呼び覚ましてこれも危ういのだが、その郷愁じみた記憶がどこから来るのか、心当たりはいくつかある。
 作家「松本竣介」の線の心地よさに心動かされたのはいつのことだろう。
線の多様さとシンプルな線が含む深さと。 台風来襲のどんより空に線は適度な奥行きで浮かび上がり上昇していく。
さてさて、すこし重荷を解いて夜の指導へと向かいましょう。
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*高澤学園発行/松本竣介デッサン集より