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2009年06月24日

●それぞれの道

予備校で彫刻を学び、大学も彫刻科に籍を置きながらも皆が皆そのまま彫刻の道を歩む訳ではない。やりたい事も見つからずに4年間を過ごす総合大学の学生が多数である現実を考えれば、美大での方向転換はその意味でも珍しいことではない。
そんな訳で仕事がら卒業生と出会う事が多々あるのだが、「元気〜!!今なにしてるの?」の問いに、彫刻とは縁のない就職先を告げられてびっくりすることがある。「道」の可能性は将に限りないのだ。
 すいどーばたから多摩美の彫刻、そして大学院は絵画学科へと進み作家活動をしている若きアーティスト、戸谷森 「it's like this, it's like that」の個展に行った。「藪に棚」「藪に入る」などのタイトルの作品数点でのシンプルな構成だ。空間の奥行き、そしてこの重量感、記憶を探り出すような印象はやはり彫刻的ではあると一人合点。友人である同級の彫刻家二人と共同アトリエだという。血筋も環境も彫刻の彼の展開を見守りたい。
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2009年06月23日

●福島県北

6月は2回目の出張。今度は初めての参加となった福島での校外講習会。なんと言うか東北の末端で生まれた私にとって北への旅は何故か親近感が湧く。東北というだけでなんだか親戚のような気持ちになるのだ。今回は福島県の県北の美術系高校と普通高校の美術部員、1年〜3年までの総勢127人もの参加となった。
主催は「福島県高等学校教育研究会美術工芸部会県北支部」と、全国制覇できそうな迫力!。それはそれとして、前日には懇親会なるものが厳かに催され、教職員ならではのこれもとても親近感のある楽しい時間となった。
 どう言ったらいいか、地方へ行けば行く程単純にビジネスライクというよりなにか人との繋がりが大事にされている印象があって恐れ入る。こちらもかなり強引にすいどーばたのコマーシャルをしている部分もあり、かなりうさん臭い集団にもかかわらずである。
 さて、翌日。さすがにこれだけの人数、休憩など挟む暇もないのだが、学生はとても素直に休むことなく食らいついてくる。さしずめスポーツ界なら「スカウト」したい学生は数多いのだが、こちらは意に反して、聞いてみると美大を目指す学生はやはり少なく、若干つっかい棒を外されたような気分。それでも、きっと目を世界に向ける何者かが出ることを願い、おじさん講師二人は赤裸々に奮闘しながら美術の夢を語るのでした。
関係者の皆様、本当にありがとうございました。また、全体を仕切っておられた青木先生には酔って少々絡んでしまいました・・。ご無礼、 m(__)m
でも楽しかったので来年も絶対行くぞー!!その前の学校から辞令が下らない恐れがありますが・・・・。

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*捨て身、親近、笑い、奮闘指導する関口先生。人物デッサン希望の60名の学生の皆さんと各高校の先生方。

2009年06月12日

●岐阜/加納高校(美術科)

例年、いくつかの高校へ「校外講習会」へ行く。受験に関しての説明と実技指導が主な内容なのだが、中には地域の高校が集まりコンクール形式で行われる大きな催しもあって、美大受験生ばかりではなく、一般美術部員を中心にその腕を競うもので、他校との交流もあってか緊張と熱を帯びる。
 今回は岐阜にある美術系高校である加納高校へ行って来た。ご承知のように、国公立美大を中心にした進学という、全国でもトップクラスの実力を持つ優秀校という印象が私にはある。事実、数多くの優秀な作家を輩出しているし、加納出身の受験生も我すいどーばたからはかなり高い確率で東京芸大に合格していく。特に加納高校出身の男子学生ともなると、それだけで「芸大合格1名」確保!と、予備校からすればまさに金の卵である。
 しかしながら前回もブログで触れたが、どの美術系高校も「女子校化」しており、男子学生は数名という異常現象。ならば女の時代だぁ!!と気持ちをシフトするもやはりその割には彫刻を志す女子は多くはなく、一体全体この国はファッションとデザインとマンガに支配されてしまうのかぁ〜!と幼き日の超マンガ少年の僕さえも憂えてしまうのである。
名古屋駅とは時間にして僅か数十分。その名古屋駅とは比較にならない程の活気の無い岐阜駅界隈の淋しさの印象もあってか、どうかどうか骨太の学生が、いざ!先輩の後に続いて志高く世界を目指しておくれ!!とばかりに祈ってしまう。
岐阜駅ホームから岐阜城を望みながら、群雄割拠する名だたる知将を思い浮かべ岐阜を後にしました。

*3年生の彫刻志望の学生さん。皆さん、やはりかなりハイレベルのデッサンでした。
「実直で粘りがある」、そんな印象でした。皆さん!!どうもお疲れさまでした。そして生きのいい「赤いつなぎ」の二年生の皆さん!頑張ってくださいね!
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2009年06月04日

●蘇る

日本の住宅事情で、家屋の再利用率はイギリスが80%以上で日本は12%程度と聞いて驚いた。勿論、欧米の石造文化との比較とは比べようもないのだが、日本という国は、作っては壊し作っては壊しを永遠と繰り返しているのだと思うと暗澹となる。
 一方で新潟で行われている大地の芸術祭など、こうした再生へのプロジェクトが中心的企画となっていることは光明である。また近年、地域活性化のための手法としてアートを取り入れる試みも多くなって、使われなくなった商店街や古い建造物などの再利用も含め、アートが人を繋ぐ媒体ともなっている。こうした様々な展開は生きたアートとしても定着もしてきた。垣根をこえたアートのありかたがいよいよ重要度を増して来たようである。

*商店街の古い旅館での学生によるインスタレーション
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