●花びらの軌跡
5月は花の季節。特に北の大地では、冬を耐えた植物が満を持したかのように一斉に咲き誇る。
咲いた花は散るのだが、これにもそれぞれ特徴があって面白い。椿はボタっと落ちてある種不気味でもあるし、モクレンの花も派手に落ちて褐色に変色し大地に溶けて行く。ある夜、光の点描のように輝いた道に出会った。まるで星が落下したかのようなその正体は、遠くから風で運ばれた桜の花びらと気づき驚いた。
こうしたものの自然落下が作り出すバランスはまさに絶妙だ。現代美術の巨匠、ジャクソンポロックはキャンバスを床に置き、無意識によるドロッピングという手法での全く新たな絵画を成立させた。自らが無意識となって自然と繋がるというものなのだが、どんな表現にしろ、人間精神の追求にしろ、やはり自然回帰へと向かうのだろう。自然が織りなす絶妙の落下の軌跡。全ての意味を凝縮させて花びらが光り、風で揺らぐ。
雨水に器にユキヤナギの花びら