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2009年04月30日

●断片

密集した住宅街、視野が広く開かれる空間への遭遇も稀で、迫って来る風景は近視眼的な距離となる。垣根越しの植栽の変化を楽しみながら歩くのがこうした路地散策のこつかもしれない。
 すいどーばたキャンバスは西武線の線路を挟んで3カ所に点在していて、広くはないのだがそれなりに個性的な空間が存在する。とりわけ無用とも思えるコンクリートの構造物の断片に目が行く。その量塊に潜むなにものかを感じられて、ドキリとしたり爽やかな気持ちにもなれたりするのだ。一種、彫刻病とも言える感情なのだと分かっていても、妙に太古の遺跡にも匹敵する時間の流れや清々の空と風を想起させたり、逆にキナ臭い人の生活が集積されて心の中をざわめき立たせたりと、断片の持つ意味は無限に広がって行く。こうして発せられた断片の光に気づいた瞬間、断片は一つの物語となって歩き出す。
考えてみれば、半世紀に及ぶ私の過去も連続の光景としてある訳ではない。記憶の断片が繋がり今という存在にたどり着く。

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