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2009年01月29日

●作家の未来/山本正道展

東京藝術大学大学美術館で開催されていた「山本正道退官記念展」へ行った。
初期から近作までの彫刻約36点と素描による本当に見応えのある構成であった。
山本氏は私にとっては芸大在学時の指導者であり、また上下分け隔てないその人間性はもとより、作品制作への向き合い方を自らの姿勢で教えてくれた数少ない作家の一人でもある。最終日の会場で、偶然ではあったが何年振りかで先生とお会いし、ご挨拶をさせて頂いた。そして、あらためて「穏やかさとは秘めた闘志である」とあらためて先生に接して思うのであった。
 若き時代、イタリア、ローマ美術学校でのファッツィーニ氏のもとでの研究。アメリカでの先住民族の遺跡を訪ねての研究と、あの静かさには実は世界の土に触れ歩き抜いた体感的行動やその中で発見したささやかな日常の呼吸、そして遥か地平の彼方に去来する悠久な大地の記憶さえも潜む。だからこそ どこまでも静謐な世界は豊穣なのであろう。
 思えば先生とは世代的には調度一回りの違い。一方、先生の退官後を受け引き継ぐ若き指導者も一回り違いの世代となる。そうした中間に立つ自分の距離を心の中で直線にし点を打つ。若きも老いも鼓動する点となって未来へと進む。失ってはならないものは、だからこそ自らが輝くことなのだろう。

「私は単に長く大学にいただけですよ・・」先生が静かに語った言葉が頭の中でこだまする。
あらためて「存在」の意味を問われたようであった。
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