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2008年10月25日

●天使の花

私の通勤は少々過酷だ。山梨との県境から片道2時間半近く電車通勤。新宿から山の手への乗り換えはマラソンでの最終コーナーを回った、そんな安堵感と同時に、満員電車の中央線で熟睡した頭を切り替える、そんな時間でもある。もうこの時間の山の手線は車内は空いていて、穏やかな目白駅での下車はいたって清々しいものがある。
 そんな中で先日、吊り革につかまる私の目の前の座席で必死に折り紙を折る女の子に出合った。お母さんは携帯片手に静かにメール打ち。女の子はたまにお母さんに話しかける。もちろん手と目は膝の上の折り紙へ集中している。私はいったい何ができるのかとその手を追った。電車の中、膝の上という不安定な中で、女の子の手はまるで魔法のように几帳面に折り紙を折って行く。
 こんな小さな手でなぜこれほどのことができるのか不思議で不思議で。さらに折り進められて行くその折り紙の奇麗な色の対比にも見とれ、「おじさん」はもう固まったように見続けた。
 と、その子が突然顔を上げた! 目と目があってしまった!
「まずい!!」とおじさんは分けも無く焦りたじろいだ。すると、その子が手を差し出した。
 「あげる!!」と・・・。

実は私には子供恐怖症的なところがある。どうもあの純粋さの前でうまく振る舞えないのである。 顔は引きつり、やっとの思いで受け取り、その折り紙を胸にあてがい勲章のようだとポーズ。女の子は僕の顔の引きつりを見て、うれしそうに引きつった。
 まるで天使のようなその手から渡された折り紙は、僕の心を満開にさせる「花」だった。

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