●そこにあるもの
仕事をしていると何気なく目にとまるものがある。生活の中でもそうなのだが、人が動くとそれに連れて物も動く。正確にはものが散らかって行く。健忘症の私は特にその傾向が強い。別に何の美意識が働くわけではない。しかしどうだろう。ふと自分の行為の軌跡の中に、あるいは生活習慣が作り出したものの中に、意味も知れずその存在の美しいと感じることができる瞬間がある。それは多分に自意識の中でしか成立しないものなのかもしれないが、それがどれだけささやかなものであれ、まるで自分の宇宙に飛び立ったような喜びに満ちるのである。