●北の旅人
十和田市現代美術館へ行って来た。
青森駅を出発、車窓からの北の風景を楽しみながら南下、三沢駅へ。「三沢基地」のイメージが大きかっただけに降り立った駅の素朴さにまずは驚き力が抜けた。30分以上の乗り継ぎの待ち時間をぼ?と過ごし、旧東急7000系単線の将にレトロな十和田観光鉄道に乗り込む。無人駅、運転手一人のワンマン電車はひどくのどかに走っていく。なにか「ちんちんちん?ごとごとごと?」って感じで。そして30分弱で十和田市駅。う?んん・・何だろうこの静けさは・・・。鳴り物入りの現代美術館の大々的なイメージとは程遠く、駅には掲示も地図も無い。窓越しに駅員に尋ねるとパソコンのネットから取り出した地図を印刷し、さらに美術館の位置を丁寧にマーキングしさらに駅外まで案内見送ってくれる親切さ。恐縮と感動が入り乱れ深々と頭を下げいざ出発。駅前の広すぎる程の空き地のような駐車場を横切って地図を片手にウロウロ20分程歩き到着。迷わなければ意外と近いのだ。
整備された並木通りはひどく落ち着いていた。奥羽山系から流れ込む水。逆になぜ官公庁街だけはこれほどきれいに整備されているのか不思議にさえ思えた。
さて美術館、第一印象。きれい!おしゃれ!開放的!わかりやすい!
この美術館の理念は「新しい体験を提供する開かれた施設」だという。21人のアーティストによるコミッションワークがホワイトキューブの建物の中に分散展示され、それらがガラスの廊下でつなげられている。美術館という威圧的な雰囲気は全く無く開放的で心地よい。受付もレストランも案内のお姉さんも都会的で素敵でいい、のだが・・ここはどこなんだ?と、ここまでたどり着く風景を思い起こした。これはこれでコンビニの店員のごとく規格化されているのだろうか、とも。
一方館内には美術館では珍しく不思議なそして微笑ましい光景があった。介護の若者に案内された沢山の車いすのご老人方が作品を楽しく体験していた。展示作品がそのコンセプト以上に視覚的にも体験的にも分かりやすく、親しみやすいのだろう。その意味では美術館というよりはまるでテーマパークに近いのではとも思えた。
駅までの帰り道、大きな商店街を通った。国道に平行したアーケードを有した立派な商店街、そのほとんどがシャッターを閉じ閑散としてる。その中で店頭だけに現地の野菜や山菜、果物を並べるお店で近所のおじいさんが作ったという立派なイチゴを超破格の値段で買い込み貪った。
日差しがカンカンと暑い。イチゴは野味を帯びて口の中で溶ける。
美術館で開催されていたオノ・ヨーコの「平和のメッセージ」も都会的な美術館の作品もイチゴの甘酸っぱい香り中に溶け込む。そして奥羽山系から浪々と流れ下る奥入瀬の水を眺めながら「アートもイチゴも水も美味しいのだ」と、やりきれない気持ちと一緒に飲み込んだ。