●周遊/美大卒展
美大卒展雑感
私立美大、東京芸大の卒展を見た。半日だけの駆け足ではあったけれど、春の天気にも恵まれ足取りは軽く。
学部、大学院も含め、すいどーばた出身者もかなり多く、行き先々で懐かしい面々と会ったり意外な人に声をかけられたりと、喪失しかけた記憶が再生するようで嬉しかったが、健忘症ゆえの寂しさか、名前がなかなか思い出せない学生も多く失礼をしてしまった。一方で学生はそれぞれ皆驚く程逞しくなり、あるいは大人になって見違えるようであった。時の流れは恐ろしいものである。そして予備校での立体制作が、粘土オンリーであることを思えば、4年間での素材への対応能力はまるで異次元に近い程の変わりようで、技術力も含め「もうこいつらはライバルなのだ!!」とあらためて鼻息荒く自分を鼓舞しているのであった。
六本木の国立新美術館での女子美、多摩美、武蔵美、日芸、造形大学。そして東京都美術館の東京芸大学部、武蔵美大学院修了展。さらに芸大彫刻棟と芸大美術館での大学院修了展。いつもなら好きな建築科やデザインの仕事も見るのだが今回は彫刻展示だけの「はしご」。
展示を見ながら、一昔前とは比較にならない程の展示スペースの広がりに驚き、そして時代の流れを感じながら、思いがけない作品に出会って喜び、そして一方で愕然とし、ため息も出て鑑賞後の感想は正直複雑であった。
とりわけ、時代を反映していてか、作品の表現手法の類似化、伝統工芸学校のように技術力と共通のイメージを繰り出すその作品の多さに少々げんなりもしてしまった。表現のオリジナル性とは別に習得した技術の博覧会のようでもあり、大学での思索的訓練はどうしたのかと疑いたくなる。言わば、大袈裟な言い方ではあるが、人種の坩堝たる予備校での学生達のひとりひとりの顔を思い浮かべながら、組織とヒエラルキーと時代と社会の「フレーム」をもみるようでもあった。
それはそれなりに収穫ではあった。