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2008年02月14日

●志賀ガーデン/その2「楽園」

という訳で「志賀ガーデン/SHIGA GARDEN」である。
すいどーばたで消耗されていくモチーフの行方は様々。その多くは1日?3日間で課題終了となるモチーフのため、役割を終えた「生もの」は当然処分となる。金魚や亀は「里親募集」に始まり学生の微かな愛を頼りに消えて行く(その後の生死は解らない)。さすがに生魚や干物、海老や貝など高級であろうとなかろうと大概は廃棄処分となる。アートの為とは言え何とも勿体無い・・・。そして果物、野菜は「自由お持ち帰り」と張り紙され瞬時に消える。これはいとも呆気なく消える。そして数々の美しい切り花はその役割を終え学生の部屋を飾る場合もある。問題は鉢物の花である。持って帰るには重い。花を終えた植物に興味は薄れる。管理に時間や労力を割けない、というハンデの中で何となく消えて行く。その鉢物の花、植物モチーフがいつの頃か一カ所に集まるようになった、隣接するビルとを仕分けるフェンスの僅かな隙間の空間に繁殖していくように。それは徐々に増え続け、手作りの棚も作られ種類も増えて増殖していく。ベンチが置かれた休憩場所でもあることから、ささやかな植物園ともなり花が咲く。観葉植物は緑の葉を広げ伸びて行く。無味乾燥だった空間は一服の清涼剤のような空間に変容していった。その植物園のオーナーはデザイン科の教務の志賀君。水やり、剪定、棚作りとガーデンオーナーはとても楽しそうだ。不思議な事に植物の成長には愛が必要だ。毎日我が子を気遣うように観察し対応しないとすぐに枯れてしまう。
霜さえ降りる寒い冬。足早に通り過ぎる予備校生。そして世話を終えて一服するにこやかな志賀君のコントラスト。
そう今日も何か穏やかな景色がいい。
世界遺産ならぬ「どばた遺産」。
感謝、感謝の癒しの光景である。

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2008年02月13日

●志賀ガーデン/その1「モンスター」

 美術予備校はまるで食欲旺盛な巨大な怪獣のようでもある。学生というお腹を空かしたヒナ鳥は貪欲に何でも飲み込んでしまう。
 知っての通り学生はそれぞれの描写能力を伸ばす必要上、様々なモチーフにチャレンジする。その為に「保存モチーフ」という、石膏像を中心としたおよそ千点にも及ぶ(数えたことはないのだが・・)だろう静物モチーフが倉庫棚に整然と並べられ、カリキュラムのモチーフとして日々続々と投入されていく。
 また人物デッサンの為の男女モデルの数々、加えて鳩、鶏、アヒル、果てはヤギや犬、七面鳥までもがターゲットとなり、時には阿鼻叫喚の動物達の悲しき雄叫びさえこだまするのである。
 もうこれだけでも雑貨屋、モデル事務所、動物園と、まぁ何とも多種多様であり、異種なものの組み合わせが生み出すドンパチが美学の基本よ!とでも言うかのように何の脈絡もないままに登場しては去って行く。
 一方で「消耗モチーフ」と呼ばれるものがある。その言葉通り、維持、保管に耐えられない物、つまりは「生もの」の類いである。花(鉢、切り花、サボテン)、魚(干物、生魚)貝、果物、野菜等、種類も季節も国籍も問わず投入される。こればかりか金魚、ザリガニ、エビなど、「食える、食えない」生き物も生け贄?となる。受験シーズン本番となったこの時期はさらにモンスターは巨大化していく。
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2008年02月09日

●工作人間

彫刻科の教官室は基本的に自由に出入りすることができる。ここには沢山の美術本は勿論の事、悩める学生を覚醒?させてくれるすいどーばた何十年の歴代優秀デッサン資料があり、時間を問わず見ることができる。その為か時には学生達の優雅な休憩室となっていることさえある。
 となると、「鬼のいぬ間」とばかりに教師や教務の留守を突いてなにやらしでかす輩達が出現する。とは言ってもかわいいユーモアやウイットに満ちた、あるいは無邪気で何気ない自己アピールにも似たものなのだが。例えば教師の似顔絵、中身の抜かれ再梱包された疑似チョコレート、文字入りメッセージ、イラスト等々といろいろである。別の見方をすればここは物作りの好きな工作人間達の集まりである。「基本を身につける」とばかりに、厳しい訓練にも似た受験勉強の中で、ある意味鬱屈された気持ちがささやかに発散された素直な姿とすれば、それはそれでうれしいし、何だかこうした学生の勝手な置き土産は実は密やかな楽しみである。

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