●続/秋深しーもっと光を
光が織りなす優雅な極彩色の世界。以前ドイツ留学から帰国した時に、ある種のカルチャーショックというものを初めて味わった時がある。その一番は、都市部で遭遇したファションの同一性と黒い髪の毛の集団への異様さだったことを今でも記憶している。そして一方で食材の豊かさと自然の風景の多様さに、こちらは絶叫する程にあらためて感動したものである。快晴の中央高速を一人車で飛ばしながら、危険とも思える両手上げで、次々と出現する紅葉の美しさに「美し日本!」を叫んでいたのである。
さて、一方でそうした錦の紅葉とは対局に、光が織りなす空間にハッとすることがある。それは影が作り出す陰影の世界。どんな極彩色の世界もその影はシンプルな要素としてまとめられ、言わばシンボリックな程の世界へと還元されていく。目白の裏道。「目白庭園」の白壁。散る程に咲き誇る楓の紅葉も、白壁に落とすその影は密やかなほどに静かで暖かい。
思わず光りと影の境へ手を伸ばす。光を捕まえられそう、そんな気がするのだ。