「インタビュー企画第47弾」
2024全国公開議次コンクール特集
〜すいどーばた美術学院講師10名の採点講評コメント掲載〜
すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 小野海
今回の公開コンクールの作品を見て感じたこと、まだまだデッサンというものを「描く競技」だと思っている人が多いです。 デッサンは「見る、そして伝える」ことです。 見る対象はモチーフ、伝える対象は鑑賞者。
モチーフ・作者・鑑賞者 、この3つのバランスがどこかに偏ることなく一つの画面の中に共存出来ていれば、きちんと評価される作品になると思います。 そのために皆さんは、よく見て、よく考えて、必死に伝える。
そうすればもっと良い絵が描けると思います。
すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 田中綾子
公開コンクールお疲れさまでした!
全体を見渡したとき、力んでるな〜という印象を受けました。
こういう場面で力が入るのは、考えようによっては悪いことではありません。
それだけ真剣に挑んでいるという証拠です。
ただやっぱり、良いデッサンが描きたいですよね!
そのためには、無理矢理ねじ伏せようとしないことです。
自分の描いている画面が目の前のモチーフに、景色に近づいているかどうか、本当にそれだけです。
普段、実技に取り組む中で、小手先のテクニックではなくて、「勘」を磨いていけると良いかもしれませんね。
当てずっぽうということではありません。
たくさんの経験を重ねた先で、たくさん考えた先で、頭よりも体や感覚が違和感に気づくという状態を目指せたら、柔軟に見たままを描くことができるのではないかな、と思っています。
考えて、なんとかかんとか組み立てて、色々なテクニックを駆使して描いているときは苦しいですよね。
その苦しみの時期を、歯を食いしばって戦い抜ければ、どこかでスッと力が抜けるときがきます。
その日を楽しみにしながら、頑張っていきましょうね!
すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
皆さんお疲れ様でした。
全体的な感想としては経験者が多いせいか、底上げ感はあるが、中盤から上位層のレベルがもう少し高くなると良いと感じました。
いずれにせよ、総勢131名。
今年も彫刻を学ぼうとしている学生が大勢いることに喜びを感じます。
実技として強化が必要な所は、今回で言うと主に3点。
・顔を似せて欲しい。
・コスチュームに惑わされず、面やボリューム、人体の構造でボディを捉えて欲しい。
・色調の美しさと炭の魅力を生かした柔らかい表現が欲しい。
合格レベルになると決め手はやっぱり頭部の印象でしょうか。
しかし、細部に囚われすぎず視野を広く合わせていくことが重要ですので、今後も経験を積んでいくとよいでしょう。
あと4ヶ月、粘り強く頑張ってください。
すいどーばた美術学院 彫刻科夜間部講師 小柳湧志
お疲れ様でした。
コレうまッ!!というデッサンが少なく、力の7割程度なんだろうなと思うデッサンが多い印象で
本番ってこんな感じだよなと思わされる内容でした。
やはりただ上手いだけでは難しいですね。
ただのトレースなら写真でもできる、完璧な模刻なら3Dプリンターでもできる。
なのになんで入試ではこのような出題がされているのか?しっかり考えるべきだと思います。
何かを感じ取る力を養う、それを出力する力、客観性!!しっかり養ってください。大学に入ってまだまだ自分の中でこの力が弱すぎて苦労する日々です。
美大受験という狭いカルチャーですがその中に自分なりの解を見つけ、自信に繋げて明るい未来を作っていきましょう。
すいどーばた美術学院 彫刻科夜間部講師 嶋田一輝
皆さんお疲れ様でした。全体としてはドンピシャな作品は無かったものの、感動が伝わるデッサンは何点かあり、採点が楽しめました。
上位の人、いつもより結果が出た人は今回何が自分の中で良かったのか、何故他人から評価されたのかを予想して、講評で擦り合わせてください。更なるレベルアップに繋げましょう。
そして、毎年出る「普段は実力あるのに実技が振るわなかった人」その人達はダサい言い訳をして、結果を流したりしないでください。
受験本番、教授達は貴方の「今まで」「普段」なんて知りませんし、加味しません。
今回の上手くいかなかった結果は、いずれ自分から出たであろう綻びでもあるので、「今自分の弱点を知ることが出来て幸運だった」と受け止めましょう。そして落ち込むなら今日中に落ち込んで、分析して反省してください。
反省した先のエネルギーを期待してます。
遠方から来た人、まだ実技経験が浅い人は大規模な実技コンクール自体中々無い経験だったと思います。
当日の場の空気感、講評、採点シート、刺激的な経験をお土産にするのは勿論、普段見ることができない上手い人の実技を観て沢山吸収して下さい。また、目で盗めるものは良し悪しを置いて、どんどん盗んでいって下さい。鮮度のある内に試すことも大切です。時間を経て体に染みてくると思います。
すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 谷内めぐみ
みなさんお疲れ様でした!
今回も、130名以上という沢山の参加があり緊張感のある良いコンクールだったのではないでしょうか。
私が初めて公開コンクールを受けたのは高校2年生で、それが初めて東京の予備校に行った日でした。
それより前は日本に色んな予備校があるって事もよく分かってなくて、すいどーばたの事をすいーとばたーだと思ってたくらいなんの情報も仕入れてませんでした。
当日は緊張しまくりでデスケル持つ手がすごく震えて全然構図とれないし、なにもみえてこなくて部屋が白っぽく霞んでみえたのでそのまますんごいうす〜いブルータスを描いたのを良く覚えています。
そこから芸大に受かった3浪の年まで計5回受けた公開コンクール、1度も合格ラインのB°を取れた事なかったですね。
部屋に入って自分のデッサンが前に無くて探している時間は悔しくて、焦る気持ちでいっぱいだったけど、もっと頑張るぞ!と奮い立つ瞬間でもありました。
コンクールの結果が悪くてもwebアップにならなかったとしても、でも受かればいっか!の気持ちで目標に向かって突き進んでほしいです。
全部はただの過程です。
自分が後悔せずにこれで良かったと思える選択が出来ればいいと思います。
ここは目標を持って、動きだしてる人が集まっている空間だと思うので、その大きな一歩が踏み出せている自分を褒めてあげてほしいです。
受験当日までの時間、大切に過ごしてください。寒くなるから体調にも気をつけて!
応援しています。
すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 阿部光成
ほめて伸ばす
昨今この方針で教育が育まれているようですが、自分はどうだろ?と懐疑的です。言い換えが極端ですが、ほめられないと伸びないといった構図がそもそも学生を馬鹿にしていると思っています。
さて今回の素描の内容ですが、顔が似てないのが多数ですね。それは画面(木炭紙)に対して顔面の場所(位置)が上手くいっていないのが散見しました。原因ですがただ構図の吟味が甘いと言えます。構図の良し悪しは完成のイメージが湧いていたかどうかによります。想像力ですね。その想像が出来る前に見切り発車の素描が多数です。構図が悪いとほぼ顔は似て見えません。その理解が乏しい〜まだまだですね。また全身像のイメージも弱いですね。重心の確認を胸像でもしていますか?(即物的に捉える人は重心のイメージは皆無ですね...見た目だけなので...)皆さんにとって耳の痛い事を言いますが、カッコ悪い彫刻を作って欲しくないので、これからも感じた事を伝えていきます。まだまだ物足りないですね〜よろしく!
すいどーばた美術学院 彫刻科夜間部講師 遠山蘭
お疲れ様でした。
勇ましいジョルジョが全然居ない!
これが第一印象でした。
これから戦いにゆくという時、ギリっとした目つきでドラゴンを睨みつける姿、私ならかっこ良く描きたいですね。そのシーンや表情を読み取り、描きろうと意気込みを感じたデッサンはやはり自分の中で加点がありました。
仕上げるために乗せた炭と観察した結果自然と乗った炭は、ハッキリ違います。
今回のコンクールでは前者が多く見受けられました。
自分にできることって案外少ないです。そしてその少ない手札でも素直になって経験を重ねれば必ずかっこいいデッサンは描けます。やれる事もせずに、できない事をやろうとするなんて論外だと思ってます。
みんなが気軽にできることってなんですか?線をまっすぐ引くこと、姿勢を正すこと、道具の管理をしっかりすること、身の回りを整理すること...などなど自分なりのやろうと思えばできることってありますよね。
特に"観察すること"はみんなが共通してできることだと思っています。そこをおざなりにせずにまずできることを必死に積み重ねていきましょう。
その先に新たな向き合うべき課題が見えてくるはずです。
受験において胸を張れる自分でいる為には日々の実技に対しても自分に対しても誠実さが必要ですね。
すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 赤尾智
目の前の状況にきちんと向き合おうとするとき、まず自分自身を客観的に見つめることが何よりも大切だと思います。
そのためには、気付かぬうちに歪んでいった主観を自覚し過去の経験によって作り出された先入観や思考の癖を外す必要があります。
自分と距離を置いて余計なものを削ぎ落とした状態でなければ何事も誠実に捉えることは出来ません。
今回採点していて、ジョルジョらしさが伝わってくるデッサンが少なく感じました。
モチーフの特徴をただ盲目的に拾っていくのではなく、自分の状態を客観視するためのゆとりを持つことで問題点を真っ直ぐ受け取れたり、感動や実感を伴った実技ができると思います。
「やってやろう!」と気負いすぎたり、
逆に「自分には出来ない」と断定するのでもなく、素直な心と粘り強さを持って目の前の事に取り組んで下さい。
すいどーばた美術学院 彫刻科講師 松本康平
皆さんお疲れ様でした!
総勢130名を超える受験者たちが集まり、普段とは違う緊張感の中で、満足のできる実技はできましたか。
僕は普段講師として皆さんの実技を見る機会が少ないので、こういう機会に年に1度の実技を見れるのを楽しみにしています。
そこを見せたいのかな。熱量あるな。苦しんでいるな。
など画面を通して伝わることも多くて、それはテクニックだけでなく、実技のプロセスや姿勢、精神面でさえ中には見えるものもあるかなと思います。
自分が伝えたいことを作品を通して伝えるのは難しいことだなと常々思っているのですが、
普段話をすることと似ている部分もあるかなと感じます。自分語りしすぎる人より、聞くのも上手な人のほうがいいですよね。
せっかく今回130枚の作品がありますから、画面を通して聴いてみてください!
ここが見せ場なのかな。もっとこうしたら良いのかな。汲み取ってみて、今一度自分と作品と向き合ってみるのもいいかなと思います。
では、最後に僕の好きな言葉の一つを紹介して終わります。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは目には見えないんだよ。亅
サン・テグジュペリ [星の王子さま]より