2022年全国公開実技コンクール

「インタビュー企画第43弾」
 2022全国公開実技コンクール特集

                  担当 田中綾子 赤尾智

ーすいどーばた美術学院講師10名の採点総評コメント掲載ー

各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。


文章が送られてきた順に掲載します。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海
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デッサンは絵なので僕はやっぱり、美しさやカッコよさを感じる絵を評価したいです。


もちろん守らなければならない項目は多いですから、やりたい放題はダメですね。
でも結局は自分の絵ですから、全てを利用して魅力的な作品を描いて欲しいです。
本気で、魅力的な絵を描いて欲しいです。
僕は提出されたデッサンを、それがその人の本気であるという前提で、一つの結論として受け取ります。この人はこおいう景色を見たんだな、こんな景色を僕に魅力的に伝えてくれてるんだな。って思えると、良いデッサンだな〜ってなります。
ガッタメラータは難しいよね、緊張もある中よく頑張ったよ。とはなりません。
魅力のない絵には惹かれません。


上から順位は付いてますが、正直全体を通してそんなに差はないです。
大渋滞してる集団の中から、何か光るモノを見つけようとしましたが、どんなに探しても描かされてる絵ばかりでした。

残りの4ヶ月弱、描かされ続けるのはとてもしんどいですよ。
もっと攻めた方が良いと思います。攻めることを日常にしないと、本番ショボい作品を置いてくることになります。

「攻める」ってのは変なことをやれと言ってる訳ではないです。
モチーフをちゃんと見て判断する、というのは最大の攻めです。
攻めた分だけ比例して責任が必要になりますから。


もっと攻めてください。


すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
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採点を振り返って

正確に描かれているデッサンは少ないものの、熱意を感じる作品が多くみられました。
恐らく高校生が大半かと思いますが、今年は下位のレベルの底上げを感じます。
上位の作品はもう少し構造面の正確性と明るい調子で仕上げられた作品が多いとよかったです。

入試まであと4ヶ月と考えると楽しみな内容ではありました。
沢山描いて多様な見方を増やしてください。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中綾子
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みなさん、お疲れさまでした。

1年に一度の公開コンクール、やっぱり力が入りますよね。
アウトラインやプロポーションからしても、もっと正確に捉えたいというのは大前提として、全体的には少し無理をしているデッサンが多いように見えました。

形を変に引っ張ろうとして炭がギラついていたり、手数は入っているのに全体のバランスが見えておらず作業的で、ベッタリと空間が潰れてしまっていたり......
とにかく自然さからは離れてしまっているような状態です。

石膏デッサンは、器用に描けるかどうかを見せるものではなく、どう見ているかを見せるものだと思っています。
もちろん、見たものを画面に再現するには技術や知識が必要なのですが、モチーフに近づけるために使わなければ意味がありません。

モチーフとして使われる石膏像たちは、彫刻としてかっこいいものばかりです。
そのかっこよさを正確に画面に表せるよう、ゆったりと捉え、じっくり読み取ってみてください。


すいどーばた美術学院 臨時講師  遠山蘭
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皆さん、公開コンクールお疲れ様でした!

この時期に、本番と同じ6時間で仲間と戦える機会があるということはすごくラッキーなことです!
それを自分にとって意味のあるものにするかどうかは、本人次第だと思います。
今回失敗してしまった人も、それぞれ原因があると思います。
例えば、描き慣れない二列目だったから!とか、光の悪い位置だったから!とか、自分は本番に弱いから!とか...。
当日の状況によって、自分の力を出しきれなかった言い訳が沢山出てくると思います。
でもそれだけで終わってしまったら本っっっ当に勿体無い!
失敗してしまったからこそ、得るものが多いんです。
その日の自分を冷静に振り返ってみれば、もっと自分にとって重要な見落としが見えてくるかもしれない。
そういう作業を含めての公開コンクールなんだと思います。
私自身、3回公開コンクールを経験していますが、B゜は一度もとれたことがありません。めちゃくちゃ本番に弱いタイプです!でも、最後の公開コンは自分にとって、とても大きなターニングポイントになりました。やらかした後、自分なりに分析・反省することによって、その後の実技の取り組み方に変化が出てきました。今思えば、合格のきっかけになっていたんだなと思います。
本番まではまだまだこれからです。
本番で失敗しないための今!凹んでる暇なんてない!自分なりのやり方で、沢山失敗してその分自分の蓄えにしてください!応援してます!


すいどーばた美術学院 臨時講師  嶋田一輝
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今回は代打での参加となりましたが、どばたを出て2年目にして初の採点者側としての機会を頂くことになりました。
アトリエに入ってからの第一印象は、面白い個性のデッサンもあるけど、胸中のソワソワした感じが炭に出ていて、像よりも先に作者の方を手前に感じてしまう作品が多かった感じがしました。
突出したデッサンは一枚もありませんでしたが、試験当日も恐らく100%満足できるような作品を置いてくることは難しいと思います。
各々の努力や成長のストーリーも、本番では何のアイデンティティーもない3桁の受験番号に収められてしまうのが残酷です。
でも、そんな平等な条件の上で足踏みをしていては凄く勿体無いと思うので、今回の結果を全体の1つとしてしっかり受け止め、これからの時間で自分の出来ることを無理せず着実に広げていってもらいたいと思ってます。
一旦深呼吸してください。
皆さんお疲れ様でした。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 野畑常義
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上位の票がかなり割れて、印象も深度もバチッとガッタメラータになっているものが少なかったのかなと思います。

メソッドが出尽くしているから、ある意味手の技術はみんな身につく時代だし、順位が後ろの方の人も随分と達者だなぁとも思いました。そんな優劣はあまり感じなかったです。

参加した多くの人にとって、ガッタメラータは見慣れた像です。何度描いたかわからない人もいるでしょう。

でもどこかの美術と関係ない人が会場に連れて来られて、特定の席に座らされて、コレを目の前にした時、何か普段の生活とはかけ離れたとんでもない物体がそこにある訳ですよね。

もう一回、出来れば毎朝、その何かとんでもない物体を観て欲しいなと思うんです。

先入観の無い新鮮な発見に比べたら、知ってることなんて大した価値がないんじゃないかな?最近じゃあ知ってるせいで何かを失ってたりもするんじゃないかな?そもそも何を知ってるのかな?聞いたり読んだりしたこと以外。。

本気で捕まえに行かなきゃ、近くで遠くで、穴の開くように、サラっと一瞬見かけるように、触るように、抱きかかえるように、毎回そうやって観なきゃ少なくとも僕は描けないです。相手はとんでもないんだから。


すいどーばた美術学院 臨時講師 谷内めぐみ
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みなさんお疲れ様でした。

部屋に入り1番に受けたのは全体的に絵としてまとまっているデッサンが多いなという印象でした。
それは完成に向かおうとしている責任感を感じる部分でもあるのですが、わたしにはそれが木炭の粒子の定着具合への気の使い方とモチーフらしさ引き出そうとするバランスが少し前者に偏っているようにも感じてしまいました。
今やっている仕事はちゃんとモチーフに近づこうと出来てるか?
完成って何なのか?
目の前にある彫刻のかっこよさを自分の画面から感じとれるか?
緊張している時こそ描き急がずに新鮮な発見が出来るまでモチーフをじっくりみてみるといいのかもしれません。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成
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公開コンクールお疲れ様でした。
皆さん結果はいかがだったでしょうか?
満足できた!思ったよりも振るわなかった?等々悲喜こもごもだと思います。

自分の受験時代の話ですが、公開コンクールで上位のデッサンがどうして評価されるのか分からなかった時がありました。「自分の方がカッコいいのにどうして?」
当時は学生数が多かったのでイーゼルに並びきらないデッサンは重ねて場末に置かれていました。
通称(お蔵入り)、、、、、
結果を期待してトップの方から自分のデッサンを探すのですが、一向に見当たりません。
「まさか(お蔵入り)の中じゃないよな?」
現実から目を背けるようにもう一度トップから見直します。ですがイーゼルに掛けられているデッサンの中に自分のはありませんでした。仕方なく(お蔵入りの)中から探しました。
束と重ねられた中に輝きを失ったような妙に貧乏くさい自分のデッサンがありました。
その時は現実から目を背けたいのか「まあ自分はこんなもんだろ」と半ば卑屈になって精神を維持していた記憶があります。
自分の位置からトップまでどれだけの距離があるのだろう、、、、

さあここからです!
駄目だと決めつけてしまうのか?いやもうこんな思いはしたくないと顔をあげるのか!

受験まで4か月。ひたむきにコツコツと覚悟を決めるしかないのだと思います。

最後に翌檜(あすなろ)という木を紹介します。檜(ひのき)に憧れて明日は檜のようになろうとしている木です。とても勇気をもらえる存在です。自分は檜よりも翌檜のほうに憧れます。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 足立仁史
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荒げずりながら熱量を感じるもの
しっかり形を合わせようとしているもの
6時間の制作時間の中でそれぞれに格闘しているように感じますが、ガッタメラータらしい頭部の量感や起伏の激しい形、姿勢、顔の印象などに迫り切れている物はまだ少ないように思いました。

自分のリズムで描写しすぎてモチーフから離れてしまっていないか
合わせようとしすぎて自分の見た視点からの臨場感が薄れてしまっていないか

モチーフを見た感覚が画面の中にしっかり再現できているか、もっとこだわっていける事が沢山あると思います。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 赤尾智
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全体の印象として、それぞれの絵から熱意は感じましたが、冷静さは少し欠けていたように思います。
具体的に言うと、ガッタメの細部の印象に気を取られて体と頭部の関係性や軸などの、押さえておくべき基本的なところがおざなりになっているものがほとんどでした。

コンクールはどうしても順位が付いてしまいますが、上位だから良いとか下位だからダメだという事ではありません。
受験生はよく講師から、結果に一喜一憂しないようにという話をされると思います。これはただメンタルを強くしなさいと言っているのではなく、どの順位にいたとしても今自分の持っている力をどれくらい出すことができたのかを正しく認識しましょう、と言うことです。向き合うべきことは順位ではないのです。

モチーフに対しても、結果や自分自身に対しても、表面的なところではなく根幹を見極める力を残りの期間でしっかり鍛えてください。