「インタビュー企画第18弾」
2011全国公開実技コンクール特集
担当 西嶋
すいどーばた美術学院と湘南美術学院が合同で公開実技コンクールを始めてから
すでに今年で8回目となります。
これまでの流れは昨年のインタビュー記事 2010全国公開実技コンクール特集と2007年のインタビュー記事 対談! すいどーばた主任 中瀬康志×湘南美術学院主任 佐藤武夫を読んでみてください。
ーすいどーばた・湘南全10名の講師の採点総評コメント掲載ー
公開コンクールの講評は時間に限りがあり、残念ながら総評を全10名の講師にお話ししていただくことができません。
個性的な講師が多く、それぞれの視点や意見には幅がありますので、全部ご紹介したほうが、より意味合いの深いものになると思います。
そこで、今年も「採点直後!新鮮で率直なコメント」を各講師にお願いしました。
採点同様、相談無しの本音コメントです。採点が終わった直後にすぐ書いてくれた人、帰りの電車の中で思い出しながら書いてくれた人、翌朝までじっくり考えて書いてくれた人、それぞれです。
では今年もまた、コメントを送ってくれた順番に掲載したいと思います。
受験生にとって有益なこと間違いなしです。是非参考にしてください。
最初にコメントを送ったのは、わたくし すいどーばた美術学院 主任 西嶋雄志でした。5日 22:35
例年に比べて上位の作品のレベルは良かったと思います。ヘルメスは難しい像だと言われていますが、しっかりと印象を合わせれば、自然と良いものになるのでしょう。
しかし、Bレベルから下のデッサンは厳しいものがありました。バランスの狂いと動きの理解が低いと感じ、どれも似たり寄ったりで、あまり差を感じませんでした。
また、全体に言えることとしては、彫刻としてヘルメスの構造を理解しようとしているデッサンが少なく、なおかつ雰囲気で捉えるに留まるデッサンが多かったのは少し残念です。そう言う意味ではトップに来たデッサンは形態を良く把握した彫刻的なデッサンで、一際目立って見えました。
芸大の試験まで4ヶ月もあります。今後の方向が見えた人は突き進み、迷いがある人はしっかりと問題を見つめ、彫刻科受験生全体のレベルUPを期待します。
次は湘南美術学院 藤川真由子さん 5日 23:31
全体的にみて、決定力に欠ける作品が多い様に感じた。
頑張っているな?というのはつたわるが、ヘルメスの場合やはり大きな構造のうえに柔らかい動き形態が乗りかつ量感が表現出来ている事が望ましく、そういう点でも満足出来る作品は3~4点くらいしか無かった様に思う。
目の前のモチーフを素直に観察し正確に描こうとするのはとても大事な事だか、それと共に元の作品の全体像や裏や自分から見えない所の形まで感じとって制作することは制作の基本だと思っている。
次は湘南美術学院 東儀悟史さん 6日 00:10
今回のコンクールの私の採点基準は、構造と空間が描けているか?という所に重点をおきました。ヘルメスという像は描写も勿論大切ですが、正中線、首の傾き、首回りの空間の表現が、理解を伴わないと描けないからです。
今回のコンクールの傾向としては、やることはやっているが、例えば髪の毛の描写であるとか、バランスのよい時間にあった進め方だとか、ですが構造と空間をしっかり理解して描いているデッサンが非常に少なかった様に思います。一見、よくみえるのですが、最終的にはそのようなデッサンは残っていかないのではないでしょうか?
見せかけの描写より、彫刻をやって行くうえで大切な構造をしっかりみているというメッセージをプレゼンテーションしていくような、デッサンを目指していきましょう。
次は湘南美術学院 主任 佐藤武夫さん 6日 00:28
今回、私の採点基準は、対象に近づいたか、近づけていこうとしているかでした。
石膏デッサンは構図、構造、光線、ムーブマンなど、考えないといけない要素はいっぱいあります。
それを6時間で全部押さえて描き上げる…きつい作業です。
その中で今回は、ぱっと見の印象では「おおっ今年レベル高い!」と思いました。
しかし採点中に感じたことは、「ヘルメス2号がいっぱいだぁ」です。似てるようでちょいと違う。いや大分違うぞ。
もっと対象に迫れ。
見抜く力を付けろ。
そして、腕を上げろ。
芸大入試までに大切なことは、方向を間違えない事だと思います。
自分勝手に描いてはダメですモチーフがある限り。
がんばろう彫刻科!
続いて湘南美術学院 齊藤寛之さん 6日 02:32
裸像彫刻の魅力!とまではいかなくとも、もう少し自然に表現して欲しいのが率直な感想です。
ヘルメス像に関して、頭部と両肩の三角形の位置関係を空間に成立させているか、
ボディ→首→頭部へ螺旋の柔らかいねじれを見れているかを基準に採点していきました。
今回この二つが噛み合っている作品が少なく、特に人体の生命線と言える「首付き」に注目できる作品は殆ど無かった様に思われます。
今後入試に向けて、現役生は「よく見る」を「構造を意識してよく見る」、
浪人生は「理解して描く」を[魅力的に作品に残す」といったところで描写に持って行って下さい。
次はすいどーばた美術学院 竹花 哲さん 6日 07:24
公開コンクールでは、普段は感じられない違った視点のデッサンを見たり、雰囲気の違う環境で実技が出来て、自分のデッサンはどんな感じのものか、客観的になれるいい機会です。講師側もすいどーばたの先生方と湘南の先生方と合同で採点することが新鮮で良い緊張感があります。
受験生の皆さんも、このチャンスを利用し、自分の価値観に自信を持ち、理想的なデッサンへ向かって入試までの期間をどのように行動するか考え、実りある時間にしましょう。
具体的なアドバイスとして、何か、自分のこだわり要素を実技に二つぐらいでいいので入れてみること。例えば、1、印象と空間。2、形の正確さと細部の完成度。3、動きの理解と量感。考えたら無限にいろんな組み合わせがありますが、どれでもいいので、自分の気持ちや感覚を信じて、組み合わせる事で何倍ものリアリティになります。
今回のヘルメスについては印象がとても大切なモチーフです。丁寧に確認し描きすすめ、印象のいいところで終わりにすることが大切です。時間いっぱい強引に描くのではなく、自分がモチーフになっている気持ちを想像してポーズしてみたり、工夫をこらして自分でしか感じなかった空間、時間、または、何かを描いてみる。ということがヘルメスに限らず、全てのデッサン対策になります。
入試まで、まだ時間がたくさんあるので、楽しく挑戦してしていってください。応援しています。
次はすいどーばた美術学院 吉田朗さん 6日 07:31
採点し終わって、全てのデッサンが順番に並んだ様子を見たときに、出来ていることが多い作品から、出来ていないことが多い作品へと綺麗にグラデーションのように並んで見えました。
自分でデッサンを描いていると、とかく難しく考えがちですが、求められていることはシンプルで、そのシンプルなことが、きちんと出来ている作品は意外と少ないのだと思います。
この並びが、いったい何の順番であるのか? それが自分の感覚で理解できると、これからやるべきことがはっきり見えてくるのだと思いました。
次はすいどーばた美術学院 氷室幸子さん 6日 07:33
全体的には、良いデッサンがあるなと言う良い印象でした。
頭部と体のバランスや動きはもとより、頭への仕事がないがしろになりがちな像なので、頭の形がきちんと捉えられている事をふまえながら採点をしました。
そして、これから立体を扱う事を目標に、今があるみなさんですから、与えられた木炭紙と言う空間に、どうモチーフを置くのかという、一番最初に気にするべきであろう構図には、もっと意識が欲しいですね。
そこを置き去りには、なにも始まらないと思います。
中盤から、途中感のあるデッサンが目立ったので、自分との戦いの部分で、やり切るという事は大切だと思います!
今の自分には、ここまでやれるんだ!と、結果を一枚一枚で出して行き、そこからまた次へつなげていく、このサイクルが、これから先に役だって行くと思います!
一生の内に、あと何枚、木炭石膏デッサンを描けるのか?以外にも、短い時間です!充実した残りの時間を丁寧に使って下さい!!
そして最後はすいどーばた美術学院 阿部光成さん 6日 08:01
皆さん、公開コンクールお疲れでした!
今回の採点のポイントはずばり「このデッサン本番で戦えるのか!」といった観点で終始採点しました。たくさん並んでいる環境で、パッと目に飛び込んでくるデッサンは有利です。が、ジワッとうったえかける実技も見逃せません。両方とも印象の良い事が条件です。
全体の感想は上位は実力をアピール出来たのではないでしょうか?さらなる高みを目指して下さい。また中盤以降はドングリの背比べに思えました。僕の中では30位も60位もあまり変わずそれ以降も数珠つなぎに感じました。要するに誰が上位に食い込んでもおかしくはなく、また些細なミスで大きく後退してしまったと思います。誰にでも勝利と惜敗が表裏です。うかうか出来ないという事では戦国時代とでも言えますね。
ここで大切なのは日々の積み重ねです。安心する事なく今のうちにミスを出し尽くし、失敗しない為の方程式を自らあみ出して下さい。逆転満塁ホームランはカッコいいですが稀です。これからの4ヶ月、自分の短所に目を背けず、長所を見失なわないようにコツコツと重ねて下さい。心がけで結果は変わります。本当です。ガンバロー!
さー、いよいよ受験が見えてきました。
今回参加してくれた152名の学生諸君!
有意義に4ヶ月を過ごして、万全の状態で受験を迎えてください!
今日はお疲れさまでした。