「インタビュー企画第13弾」
2009合格者体験記特集
2008年度に続き2009年度の合格体験記をまとめました。
wabや入学案内に載っていますが、こちらにご紹介しようと思います。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。
「浪人して気付いたこと」
白井翔平(兵庫県立明石高等学校 1浪)
東京芸術大学彫刻科 合格
金沢美術工芸大学彫刻科 合格
多摩美術大学彫刻学科 合格
まず僕が思ったのは、今年浪人してとても良かったということです。今年1年勉強して、1年前の僕は本当に何も分かっていなかったということに気がつきました。現役のときに先生から、1次は通ると言われていたので、それを信じて全力でやりきりました。その結果1次落ち...。落ちたことは残念だったのですが、それよりもなぜだめだったのか分からなかったのがショックでした。今のままでは全然だめなんだということを強く感じました。
それから自分の実力を上げるために毎日頑張りました。毎回の講評でいろんなことを言われました。弱いとか、構造的に...とか、動きを...だとか。彫刻のことを沢山考えて自分にないものを沢山吸収しよう、弱点を克服しようと努力してきました。しかし、やはりそう簡単にはいきませんでした。やってもやっても納得いくものはできず、上達しているどころか逆にどんどん悪化してさえいるような感覚に陥りました。まるで出口のない深く暗いジャングルの中をさまよっているような気持ちでした。ストレスはたまり、自信はどんどんなくなっていき、しまいには完全に落ち込んで、どうしようもなくなり、目の前が真っ暗になりました。そのとき、命綱になったのが友達の存在でした。友達と話し合ったり、励まされたり、一緒に遊んだりしているうちに、煮詰まっていた僕の心は次第に晴れ、やる気と平常心が戻ってきました。友達と一緒にすごすことは僕にとってとてもいいリフレッシュになりました。そして僕はもう1度ゼロからスタートしようと思いました。すると徐々に調子を上げていき、それに伴い自信もついてきました。いつのまにか、できなかったこともできるようになっていたので、苦しい時期は無駄ではなかったように思います。やはり気持ちが萎えている時はいいものができないもので、それでまたストレスがたまるという悪循環になるので、それを1回断つ為に気分転換するということは大事なことなんだなと思いました。
それともう1つ大事なことに気付けました。それはとても当たり前のことですが、良く観察するということです。これは本当に死ぬまで重要なことだと思います。同時にとても楽しいことです。その対象がどのように存在しているのか、それを自分なりに解釈し、表現する。何気なく読んでいた美術の教科書にそのようなことが書いてありました。そう言えば、先生方が毎回言っていることでした。本当に気付けてよかったです。
最後になりましたが、成長する場を与えてくれたすいどーばた様、先生方、両親、友達に感謝します。ありがとうございました。
「悩んでる暇があったら手を動かせ!」
相澤亮(埼玉県立大宮高等学校 現役)
東京芸術大学彫刻科 合格
多摩美術大学彫刻学科 合格
僕がどばたでの生活を通して常に意識していたことは、自分を慰めないということです。夏季講習会を終えたとき、僕はそれまで自分が思っていたよりも、自分の実力はかなり低いというキツい現実を受け止めなくてはいけませんでした。このままだと、浪人してから「そう言えばあの頃は現役合格なんて夢見てたなぁ」なんて思い出すことになりかねない。かなりガックリきて落ち込みながらも、ここで自分を慰めたらだめだと思いました。ここで安心したって何の解決にもならないし、むしろ問題から目を背けることになる。実力が低いという問題が見えて落ち込んでるんだったらやるしかないじゃん!実技の悩みは手を動かして解決するしかないんだ!と半ばやけくそな気持ちになって2学期を頑張りました。やけくそになって頑張る熱い気持ちと自分を突き放して見る冷たい気持ち。この2つの気持ちをバランス良くコントロールすることが大事。ただ冷たすぎてもつまらないし、ただ熱すぎてもいいものはできない。2学期を頑張るうちにそういうことにも気がつきました。
実力を上げなくてはいけないという問題の他に「波」をなんとかしなくてはいけないという問題がありました。僕は気分屋なところがあり、いい時と悪い時の差が激しかったのです。いくら実力をつけたところで本番で実力を出せなければ何の意味もなくなってしまう。そう思ってかなり焦っていたんですが、ここでも自分を慰めないということが解決の鍵だったと思います。上手くいった日には上手くいったところは素直に喜びつつも過度に調子に乗らないように気を付け、上手くいかなかった日には、上手くいかなかった原因を分析してみることで感情的に落ち込まないようにしてできるだけ毎日落ち着いて生活するように心掛けました。
結局、どばたでの生活は自分を知ろうという模索の連続だったと思います。自分の能力を最大限引き出すには自分という人間を客観的に把握していないとできないはずです。僕はどばたでそういうことに気付いて少しは大人になれたかなと思います。
「自分と受験の距離」
工藤湖太郎(東京都立青山高等学校 2浪)
東京芸術大学 彫刻科 合格
当たり前といえば当たり前ですが、僕は受験というものが好きじゃありませんでした。受験に限らず、優劣や勝ち敗け、競争といった誰かと比べてしか自分の成果や評価が認められないものについて考えると、無性にやるせない気持になりました。こと受験はどれだけ努力し成長しても、そんなこと知るかとばかりに僕を煽り、焦らせ、不安にし、プレッシャーとしてのしかかってきました。1浪時代、僕はそんな現実から逃げるように屋上に登って人と距離を置き続け、受験のマイナス要素を自分の心に根付かせまいと徒労を重ねた末、一次試験で落ちました。マイナスを拒絶し過ぎたせいか、落ちてもショックすら受けませんでした。傷つくことがなければ、得ることもない。内向的かつ不毛な葛藤の中、「お前はもっと伸びると思ったんだけどな・・・」と言った先生の一言がいつまでも心に残っていました。一次試験の結果発表から新学期までの約1ヶ月間、僕は全く受験から離れて過ごしました。毎日のように遊び、映画をみて、行きたかったいろんな展示会にも行き、様々な作品から感銘を受けました。そして新学期が始まり改めて受験に向き合ってみると、それは今までとは全く違った見え方をしていました。自分と受験との間に適切な距離のようなものができていて、受験が与える焦燥、不安、プレッシャーというものが以前よりもスケールダウンして感じられました。1浪目を振り返ってみて、それまでの自分が不器用にも受験とゼロ距離で接していたことにも気づきました。友達とする日々の他愛無い会話が活力剤となって、多少の不安やプレッシャーには耐えられるようになりました。同時に現実逃避もほとんどしなくなりました。受験生最後の1年間は悩むこともあったけれど、それも含めて発見と前進の連続でした。どばたとそこで出会った人たちにはいろんなことを学び、今は感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。