●阿部先生の石彫実習!
現在、ドバチョウの学生の皆さんは絶賛自由制作に取り組んでいます!それに先立って、先日行われた阿部先生の彫刻論は何と『石彫実習』でした!大学の実習さながらの内容だったので特集記事として紹介したいと思います〜!
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さぁ早速、石を彫るぞ!ともちろん滾るやる気も大事ですが、焦りは禁物です。まずは着替えですね。阿部先生と言えば白シャツにジーンズのセットアップがもはや代名詞ですが、作家モードの時は作業着にフォームチェンジです。まずは安全靴を履きます。
石彫小話その1「トン車でやっちまった話」
「学生時代にね、1人でトン車を動かしてたんだよね。そんで坂に差し掛かったんだけどね、あろうことかトン車を前側から引っ張ったまま坂を降りてしまったんだよね、ハッハッハ。その時トン車と地面の間に足が挟まったんだけど、安全靴のおかげで足は無事でした、ハッハッハッハッハ〜。なもんで〜、トン車で下る時は後ろから引きましょう。」笑い事ではないですね(笑)
続いて長袖・帽子・眼鏡・手甲を装着します。
石を彫っている最中はこっぱや石頭の破片など、あらゆるものがとてつもないスピードで飛んできます。それらから身を守るために必要な装備ですね。
続いては道具の説明です。道具なくしては石と対峙する事は出来ません。今回石彫で使用する道具の一部を阿部先生が持ってきて下さいました!もちろん全て私物です。彫刻家にとって道具はもはや身体の一部です。それぞれの用途・特徴をしっかり把握して使う事で怪我の予防にも繋がります。バンコ・テコ・ハンマドリル・ダイヤモンドカッター・石頭・矢・タンガロイノミなど、様々な道具があるんですね〜。
阿部先生、握ったテコを指示棒替りにしてますが、よく見ると”TEZUKA”と記されています。これはもしや…そうです!このテコは以前まで東京芸術大学の先生でいらっしゃった手塚先生が使っていらっしゃったものだそうです、受け継がれていますね〜!…それを指示棒がわりに笑
さぁいよいよ石とご対面か!いえ、まだです。実際に石を触る前に、石について少しお勉強しましょう。そもそも石ってどんなものなのか?その成り立ちや、石は最終的にどうなるのか。など面白い話がたくさん出てきましたね!
石彫小話その2「透明な石」
「今回使うのは火成岩・御影石です。他にも石には様々な種類があるけど、大理石・ライムストーンはサンゴが固まって作られます。その中には”変成”や”純化”の過程を経て最終的には何と透明になるものもありますよ。ちなみにダイヤモンドは違います。あれは炭素が固まってできるものなので、成り立ちが違うんですね〜」いやぁ、興味深いお話です。
さぁいよいよお待ちかね!今回扱う石がこちらです!阿部先生がアトリエから持ってきて下さいました。
石材には特有の単位があり、30cm四方のサイズを1才と数えます。この石は2才はありませんね、50kgくらいでしょうか。
まずは石の動かし方、移動について学びます。こんなサイズでも倒れて足や手が挟まれれば大怪我になります。常に石に対しての距離を確認しながら制作しましょう。
動かし方にはいくつか方法があります、まずは石を”歩かせる”方法です。
石を抱き抱え石の角を使って、文字通り一歩ずつ歩かせます。
もう一つはテコの原理を使った方法です。TEZUKAテコをオールを漕ぐように動かしながら少しずつ進んでいきます。
どちらも地道な方法ですが、焦らず着実に少しずつ動くことが結果的には最大の近道ですね。
常に警戒心と尊敬の念を持って石と向き合いましょう。
続いて石に穴を開けてみます!この工程ではハンマドリルを使って石に垂直に穴を開けました。この穴に矢を入れて石を割るようです。
助手のアイザック先生が何やら手で合図を出しています。石に垂直に穴を開ける際、1人ではドリルの歯の角度を横から確認することができないので、こうして仲間に協力してもらうんですね〜。ちなみに阿部先生はイヤーマフをしていて音が聞こえないので、手で合図を出しています。
彫刻家は協力が大切です!
石彫小話その3「ハンマドリル」
小川主任が誰よりも最前列で興味津々でしたw
「ハンマドリルは木材などに使われるドリルとは違って、螺旋の歯で掘り進むわけではありません。歯が高速で上下しながら、打撃で砕きながら進んでいきます。螺旋構造は粉砕した石の粉末を穴の外に掻き出すための構造なんだYo!それにしてもとんでもない音でしょ。みんなもお家でハンマドリル使う時は夜の20時までにしましょうね。」
いや、ふつう家でハンマドリル使う機会無いです笑
続いて、今開けた穴に矢と呼ばれる道具を使って石を割っていきます。これが今日のメインイベントです!
矢は大きく分けて3種類、、セリ矢・マメ矢・飛び矢があります。
今回はセリ矢とマメ矢を使った方法を見せて下さいました。
割りたい面にセリ矢をセットして交互に叩いていきます。矢と矢の間隔は拳一つ分。少しずつ、少しずつ、ゆっくりと打ち込んでいき、限界に達すると石が自ずから自然に割れるそうです。焦らず、微妙な音の変化を聞き分けて石の状況を判断していく、そんな作業です。
最初は叩く音も鈍いのですが、次第にキーンといった鋭い音に変わり、耳を澄ませば石の内部から…ミシッ…ピシッ…と音が聞こえてきます。
割れました!バゴっと、時間にして2分くらいでしょうか。体感ではもっと長く感じましたね。
石を割っただけですが何かとても厳かで神聖な時間でした。割れるまでの音、割れた瞬間の音、割れてからの音、石の状況によって音色が様々変化しました。いやぁ感動したな〜
続いてマメ矢を使って割ります。まずは矢を入れるための隙間を、今度はダイヤモンドカッターで開けていきます。
これまた凄い音と粉塵です。こちらも作業は20時までだそうです。時間関係なくアカンやろっ!良い子は自分の家の中ではダイヤモンドカッターは使わないようにしましょう(笑)
石の周囲一周に切れ込みが入りました。ここにマメ矢をセットしていきます。
こちらがマメ矢です。こんな小さな道具で石が割れるんですね。
マメ矢はセリ矢と違って、沢山の本数を同時に打ち込んでいきます。これまた順番に、ゆっくりと、です。
マメ矢を地面に対して平行に打ち込んでいるので、割れる瞬間は石の上部分が持ち上がることになります。かなりのエネルギーが生まれているんですね。
割れました!ガバッと、同時に矢が地面に散らばりました。思いの外早く来ましたね、不意打ちでこれまた感動しました!
今見えている断面はつい先程までは石の内部にありました。外気に触れるのは何時ぶりなのでしょうか。きっと何万年単位です。みんなは時間が可視化した瞬間に立ち会ったわけですね。ロマンですね〜、彫刻家はロマンに弱いです。
以上、阿部先生の彫刻論もとい「石彫実習」でした!大学の実習さながらの内容で、本当に聞き応え見応えのある内容でした。石彫って豪快なイメージでしたが、実は繊細な美しさが沢山ありましたね。しかし実は、今回見せて頂いたのは作品を彫り始める手前の準備段階です。ここから制作が始まっていくわけです。時間をかけて素材と対話していく奥深い世界ですね。
そんな彫刻家の仕事の一部を見せていただきました。笑いあり感動ありの濃厚な時間でしたね。阿部先生、本当にありがとうございました!!